残業代請求についてのミニ知識〔第1弾〕
2017年12月27日付けで北里大学病院が労働基準監督署から是正勧告と改善指導を受けたことは周知の事実です。
さて、特に看護職の方々は病院から突然タイムプロという打刻データが2年分配布されたことと思います。医師職の方等他職種も配布されたでしょうか?
所属上長と面談を受け、2年間のタイムプロにおける残業時間について、残業を行っていたか確認出来た上で残業代を申請することとされていますが、2年前に残業したかについて皆さん覚えていますか?
使用者側(病院)が『労働者の労働時間を適切に把握する義務』を負っているため、
私たち労働者がタイムプロに基づき、残業を行っていたかどうかを病院に理解してもらった上で残業申請することに大いに疑問を感じている方も多いのではないのでしょうか。
また、2年分の未払い残業代を時間外申請書に手書きで全て記載するのも、2年分と多いため手が痛くなり、大変なことです・・・時間も、かかります。
そもそも労働時間とはどのような時間を言うのでしょうか?
労働基準法上の労働時間の意味について、最高裁は『労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間』としています。(三菱重工長崎像造船所事件 平12.3.9最判)
労働時間に該当する例としては、
・着衣を義務付けられている作業服等制服への更衣時間
・更衣室から作業所への往復移動時間
・始業時間前の情報収集、就業後の業務、記録作成等
・昼休みであっても電話着信を行わなければならない場合
・仮眠時間(電話着信があった際は対応しなければならないケース)
・黙示の指示による労働時間(残業をしていることを上司が知っているにもかかわらず見て見ぬふりをしているケース)
・所定労働時間外の教育訓練(上司から参加することを指示された研修、勉強会、委員会、医療安全講習会、オリエンテーション時間(実施者、受ける側双方)等)
・上司の指示により業務に必要な学習などを行っていた時間
・使用者の黙認や許容があった場合の自発的残業や持ち帰り残業
などです。
今まで着替えの時間は、労働時間ではないと考えている方も多いとは思いますが、労働時間は朝のミーティングからではなく、着替えの時間から始まります。
現在、勤務開始から朝のミーティング、夜勤からの申し送り等がされています。
そのため、着替えと更衣室から部署への移動、始業時間に仕事を始められるために行う業務(情報収集等)は勤務時間外の労働となり、当然に残業代が発生することになります。
厚生労働省の『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』において、自己申告制はあくまでも例外であって、労働時間の適正な把握を行うためにはタイムカードなど客観的な記録を残す方法が原則であるとされています。
自己申告制をとる際は、
・労働者に対して、適正な申告を行うよう十分な説明を行うこと。
・自己申告と実態とが合致しているか、実態調査を行うこと。
・自己申告した時間を超えて事業場内にいる場合に、その理由を労働者に適正に報告させること。
・自己申告に上限を定めるなど不適正な運用をしないこと。
とされています。
自己申告制で労働時間を把握するのであれば、上記の対策を十分にとってから採用してほしいですよね。
是正勧告を受けて、始業時間前の着替えも労働時間内に設定してほしい、タイムプロで労働時間を把握してほしいと思っている方も多いのではないでしょうか。
以上、残業代請求のミニ知識(第1弾)でした。
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