ライフプラン支援制度と賞与の公正評価義務について

職員の皆さん、お疲れ様です。


病院当局は、企業型確定拠出年金制度を設け、ライフプラン支援制度を導入しました。また、制度の導入に伴い、給与関連規程及び人事関連規程についての制定・改正を行いました。


そのため、10月給与より、基本給が減額されています。

基本給の欄を見て、「基本給の額が下がっている!!」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。


賃金の減額は、一般的に「不利益変更」と言われています。

労働者にとって不利益な変更は、原則労働者の合意が必要です。


賃金は労働者の生活や場合によっては生命に係る大変重要なものです。賃金減額に合理性が認められるのは、不利益を労働者に法的に受任させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合に限られます。

賃金減額は労働者にとって不利益なことであるため、労働者が合意しないとそう簡単にはできません。


しかしながら、変更後の就業規則を周知させていることを前提に、様々な事情から不利益変更に合理性があれば、労働者の合意がなくてもできるとされています。


その様々な事情とは、

①労働者の受ける不利益の程度

②労働条件の変更の必要性

③変更後の就業規則の内容の相当性

④労働組合等との交渉の状況

⑤その他の就業規則の変更にかかる事情

などです。【労働契約法第9条、第10条】

労働契約法第9条

使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

労働契約法第10条

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。 

1.労働契約法第10条における労働者の受ける不利益の程度について

労働契約法において、労働契約の締結に際して「労使対等の合意原則」が謳われています。個々の労働条件は労働者および使用者の双方が、『対等な立場での合意』によって決すべきという、極めて重要な原則です。

したがって、労働者の合意によることなく使用者から一方的に、または告知なく、もしくは不実を告げ、就業規則を労働者の不利益に変更することはできません。

【一例として、使用者からの一方的な退職金制度の廃止、ライフプラン手当の廃止が行われた場合は、不利益変更であると考えられます。】

ライフプラン制度導入に伴い、残業代・賞与・退職金について、実質的な不利益変更にならないように規程等を定めているとしています。
残業代と退職金については、基本給や経験年数などから計算が可能であり、不利益変更ではないかどうかを確認することができます。

しかしながら、賞与については賞与支給額の結果をもって不利益変更が行われたのかどうかを確認することは難しいと言わざるを得ません。


2.賞与査定に係る公正評価義務について

労働契約や就業規則において、賞与について定めてある以上、賞与も賃金の一種です。


わたしたち労働者は、人事考課結果が賃金改定や賞与額に反映することに合意し、労働契約を締結しています。

使用者は、労働者の業績評価を知らせ、それがどのように賃金改定計算に反映したのかを労働者に知らせる義務があります。【『公正評価義務』といいます。】


人事評価結果を労働者に通知しないことは労働契約法の趣旨に違反となるとする説があります。

 賃金の一部が考課・査定により算定されることが労働契約上合意されている場合には、それは使用者に人事評価権だけでなく、賃金支払義務に付随する『公正評価義務』であり、労働者側は評価開示請求権があります。

つまり、給与改定額の通知だけでは、労働契約法上では違法と考えられます。

人事考課結果が公正に行われているのか全体の評価結果の開示がないと、適正になされているのか検証できません。

人事評価について、使用者の価値判断による思想信条、性別を理由とした差別は禁止されています。使用者が、成果主義制度を希求するのであれば、評価結果分布についても公開するのが必要であると考えます。


北里大学病院労働組合準備会は、ライフプラン手当制度導入による不利益変更が行われていないことを確認するためにも、公正評価義務に沿った賞与査定が行われているのかを精査していく必要があると考えています。



以上ライフプラン支援制度と賞与査定に係る公正評価義務について、お話しさせていただきました。

ライフプラン支援制度は、私たちの給与と密接に関係する事項ですが、理事会の承認のみで導入が決定されてしまいました。

賞与査定については、一定の疑問を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一生懸命働いた結果をフィードバックされず働き続けるのは、何を評価されているのかわからず働いていることであり、労働者にとって働きやすい環境とはいえないと考えています。

労働組合がない企業においては、使用者と労働者の力の差が顕著に生じ、使用者の一方的な決定で労働者の生活に関わる事項が決定されてしまうことも少なくありません。


そのため、わたしたち労働者一人ひとりが労働組合に加入し、使用者に対して労働環境についての意見や改善点を伝え、働きやすい労働環境を作っていくことが重要であると考えています。


【労働組合は労働者が団結して、賃金や労働時間等の労働環境や労働条件の改善を図るための団体です。

労働者が団結し、使用者と団体交渉を行い、ストライキ等の団体行動をする権利は、憲法第28条で保障された基本的な権利です。

この基本的な権利を具体化するために制定された『労働組合法』は、労働組合に対し、使用者との間で労働協約を締結する権能を認めるとともに、使用者が労働組合及び組合員に対して不利益な取扱いをすることを「不当労働行為」として禁止しています。つまり、組合員には法律で不利益な取り扱いが禁じられているのです。】



基本給の減額、賞与に係る公正評価義務等についてご相談・ご意見等がございましたら、


北里大学病院労働組合準備会



または
上部団体である

神奈川県医療労働組合連合会


までご連絡ください。


【北里東病院の未払い残業代についての支払いや結果についてもご相談に応じています。】

北里大学病院 労働組合準備会 ホームページ

北里大学病院の職員による職員のための労働組合準備会ホームページです。 北里大学病院と対等に交渉することができるのは労働組合だけです。より良い労働環境は、対等な労使間の話し合いで生まれます。 個人で抱えている問題は、組織の問題です。 労働条件の維持改善と職員のワークライフバランスの向上を目指し、活動していきます。 (上部団体:神奈川県医療労働組合連合会)